物件情報管理とは?不動産ごとの特徴や効率的な管理方法について解説
物件情報管理とは不動産に紐づく、建物情報、契約、工事履歴などの様々な情報を管理することを示します。
正確かつ一元的に物件情報を管理し活用することで、業務効率化や資産価値の維持・向上に繋がります。
逆に、正確な物件情報管理がなされていない場合には、大きな問題に発展することも考慮されます。不動産運営における経営判断をするための情報が不足し、最適な判断をすることが難しくなってしまうのです。
本記事では、不動産毎の物件情報管理の特徴や不動産管理システムを導入するメリットを解説します。選定時のポイントなどについても触れているので参考にしてみてください。
不動産毎の物件情報管理とは
不動産管理における物件情報管理には、管理する物件ごとの特徴があります。
どのような運用方法で資産価値の維持・向上につなげているのか、見ていきましょう。
オフィス
企業経営において、オフィスの資産価値の維持・向上は欠かせないものです。
データ活用により収益改善を図り、コストのバランスを考慮した経営が可能になります。
例えば、オフィスで電気やガスなどのエネルギー管理をすることで、エネルギーの削減をすることができます。
広い会議室の場合、空調や照明にそれなりの電力エネルギーを要しますが、少人数で会議を行えばその分の電力カットが可能ですね。
不動産管理システムを利用すれば、エネルギーコストを考慮して、参加人数に適した会議室を提案してくれるのです。
会議室までの距離が遠くなった場合は、部署を移動させてオフィス利用の適正化も図れます。
不動産管理システムで得た情報を分析することで、コストを削減しつつ、効率良くオフィスを使用できることでしょう。
商業施設
不動産管理システムでは商業施設のような複数のテナント管理が可能になり、テナントとの契約状況の確認や請求・支払管理などを一元化することができます。
また、商業施設ではエリアごとの特性や来館者のデータを分析した上で、集客戦略にも活かせます。
分析したデータを元に来館促進イベントを定期的に実施すれば集客につながるでしょう。結果として利益の増加も見込めます。
もちろん、集客の動向や季節ごとの来館数、実施したイベントなども、データの一元化と管理が可能です。
複数の商業施設を保有していても、情報が見つけやすく利便性が高いシステムが不動産管理システムです。
投資用物件
投資用物件を管理するときにも、物件情報管理はまず欠かせません。
企業が持つ投資用物件になってくると、数千棟を管理しているケースが多いでしょう。
例えば投資用ビルの管理の場合、契約書や財務諸表、図面などの管理が必要になります。
他にも機器・部材の備品一覧なども、現状把握や将来予測のために必要なデータをまとめておかなければなりません。
煩雑しやすい情報をまとめるのに最適なのが不動産管理システムです。
また、外部とのやり取りにも活用できるため、委託している管理会社との連携時にも重宝します。
物件情報管理で不動産管理システムを利用するメリット
不動産管理システムを利用すると、多くのメリットが得られます。
例えば、資産価値の向上や業務効率化、物件情報をリアルタイムで確認できることなどが挙げられます。
それぞれの具体的な内容について、見ていきましょう。
資産価値の向上
不動産管理システムを利用すれば、資産価値が向上するメリットが得られます。
物件情報をデータ化して一元管理をすることで、資産価値の向上に役立つ情報を簡単に取得、分析が可能となるのです。
例えば需要と供給のバランスと世の中の景気動向を調べておけば、適切な賃料を設定できます。
特に地価の動向は突然変化する可能性があるため、常に最新の情報をアップデートしておく必要がありますよね。
適切な賃料設定により借主との良好な関係を維持できるのもメリットです。結果的に安定した収入の確保にも繋がります。
また、修繕工事内容やメンテナンス内容を記録しておけば、必要な時に誰でも詳細が閲覧可能になります。不動産の長寿化を目指せるでしょう。
業務の効率化
不動産管理システムは普段の業務効率化にも役立ちます。
例えば、修繕業者との打ち合わせの内容をデータ化しておくことで、次回以降の点検などもスムーズに行えます。
複数の不動産を管理している業者ほど、不動産管理システムのメリットを実感できるはずです。
システムを導入することによって、テナント契約時の契約書や更新手続きに関する書類をまとめることも可能になります。書類整理等の複雑な手続きがほとんどなくなります。
リアルタイムで物件情報を確認
従来は電話やFaxで物件情報を確認していましたが、不動産管理システムを利用すればアナログな手法が不要になります。
リアルタイムで物件情報を確認することで、調べる時間を短縮し効率性が上がります。
必要な施工管理の支出を区別すれば、長期修繕計画やCAPEXの発生状況が確認可能になります。物件情報管理のシステム化によって、一連のプロセスが一括管理されます。
不動産管理システムを選定する際のポイント
不動産管理システムを利用するとメリットを得られる一方、選定時に押さえておくべきポイントがいくつか挙げられます。
ここではシステム選定時のポイントを解説しますので、導入の検討材料としてお読みください。
コスト面での問題はあるのか
不動産管理システムを導入する場合、初期費用と月額費用がかかります。
従来の管理方法に慣れていると大幅なコストと捉えてしまい、導入に対して消極的になってしまうことも考えられますが、長期的なコスト削減は確実に実現されます。
ただし、コストが高いほど性能に満足できるとは限りません。導入したときのイメージをシミュレーションし、却って効率が悪くならないか、じっくり見極めるのがポイントです。
サービス形態や管理する不動産の状況に合わせて、予算に合ったシステムを導入しましょう。
自社に合ったシステムなのか
システムそのものが自社に合うのかどうかを見極めることも非常に重要です。
不動産の規模や自社で抱えている課題などに対して、不動産管理システムが役立つのかしっかりと検討を重ねましょう。
資料請求や打ち合わせなどをした上で、自社でやりたいことが実現できるかを確認してください。
ただし、不動産管理システムは一般的に求められている内容を取り入れていて、独自性の高い業務内容まではカバーできません。
自社でシステム開発から始めると時間とお金がかかるため、理想に限りなく近いシステムを見つける必要があります。
物件情報管理を活用したCRE戦略の企業事例
物件情報管理を正確にすることで、企業の価値を高めるCRE戦略への取り組みへも活用することができます。
CREとは「Corporate Real Estate」の略称で、企業が保有している不動産を指します。
この企業不動産を、企業価値向上のために活用方法などを見直して、不動産投資の効率を最大化させる考え方をCRE戦略といいます。
どのような企業が物件情報管理を活用してCRE戦略をしているのか、3つの事例を紹介します。
日産自動車株式会社
日産自動車株式会社は、連結販売会社の不動産を関連会社に一元化し、効率的な不動産管理をしています。
会社分割と会社統合の手法を活用しながら、合理的な不動産管理をすることが目的となります。
2005年12月には国内の販売ネットワークの再構築戦略を発表し、2006年4月には連結販売会社52社を自動車販売事業会社と資産管理会社に分割しました。
資産管理会社は2006年7月に日産不動産と統合され、日産ネットワークホールディングスに社名変更後、集中管理しています。
連結販売会社の資産管理を行う体制を整えて、不動産の使用と管理を分離しました。
このような企業組織再編を行うことで、企業価値を最大限向上させるための経営資源である不動産の経営形態を見直せます。
スタンレー電気株式会社
グループ全体でCRE管理の一元化を図った先行事例として、スタンレー電気株式会社が挙げられます。
スタンレー電気株式会社は、自動車用照明製品や発光ダイオード(LED)の大手メーカーです。
国内全事業拠点である生産施設やグループ企業を対象に、ファシリティマネジメント(FM)の統括管理部署としてFM推進課を本社総務部内に発足させました。
発足は1996年で、経営改革と連携させた戦略を行うものになります。
FMの導入向けにまとめられた「スタンレー型ファシリティマネジメント導入主旨書」は、経営資源となる人や金、情報などを機能させる総合的な施設管理機能として位置づけられました。
株式会社ダイドーリミテッド
株式会社ダイドーリミテッドは遊休地での不動産賃貸事業を手がけており、事業の経営資源を集中させ業務効率化を図ったCRE戦略の導入を行いました。
村上ファンドから含み資産の効率化を提案されたことがきっかけとなりました。
そして、アパレルの大手である株式会社オンワード樫山との業務・資本提携をして、傘下に入ることを選択しました。
オンワード樫山はダイドーリミテッドに対し、海外ブランドビジネスのトレンド情報やサプライチェーンマネジメントのノウハウを提供します。
ダイドーリミテッドはオンワード樫山に対して、衣類に必要な高品質な素材の提供や中国の工場で受託生産をします。
両社のビジネスを支えることによる、企業不動産の利用価値を最大化させるCRE戦略を実施しました。
まとめ
不動産管理システムを導入することで、資産価値の維持・向上につながる他、業務効率がアップしたり、リアルタイムで物件情報を確認できたりと、さまざまなメリットを享受できます。
得られるメリットとコストが見合っているかどうか、必要な業務をシステムで補えるかなどを導入時に確認することがポイントになります。本記事を導入時の検討材料にしながら、最適な不動産管理システムをお選びください。