建設に携わる職人の現状

図1:全産業と建設業の就業者数の推移および建設業比率の推移(総務省「労働力調査」より作成)
全産業と建設業の就業者数の推移および全産業に対する建設業の比率を図1に示します。全産業の就業者数は第2次安倍政権のアベノミクスが始まった2013年以降に徐々に増加していました。新型コロナウイルスの感染拡大で経済活動が影響を受けた2020年〜2021年にかけて就業者が減少しましたが、2022年以降は再び増加に転じています。
2023年時点の全産業の就業者は6,747万人です。対して建設の就業者は、2010年~2019年は500万人前後で推移していました。新型コロナウイルス感染拡大で経済活動が影響を受けた2020年~2022年は減少傾向で推移しましたが、建設需要の増加にともない2023年は増加に転じています。
2023年時点の建設業の就業者は483万人です。全産業の就業者に対する建設業の就業者の割合は、2009年は8.2%でしたが、減少傾向で推移しており、2023年は7.2%となっています。

図2:建設業の職業別就業者数の推移(同上)
続いて図2に建設業の職業別就業者数の推移を示します。「技能者」は一般的に言うところの職人にあたります。建設業全体では2009年から2023年にかけて従業者が▲34万人となっています。職種別では、「技能者」(職人)が▲42万人、「技術者」が+6万人、「管理的職業、事務従業者」が+7万人、「販売従業者」が▲5万人、「その他」が±0万人であり、建設業の就業者減少の大部分は「技能者」(職人)の減少であることがわかります。

図3:建設業における外国人材の受け入れ状況(日本建設業連合会「建設業デジタルハンドブック」より作成)
「職人の不足を外国人が補っているのではないか」と考えた方もいらっしゃるでしょう。実際、工事現場で外国人労働者を見かける機会が多くなっています。図3に外国人材の受け入れ状況を示します。
外国人材の受け入れは、新型コロナウイルスによる出入国規制期間は停滞したものの、増加傾向で推移しており、2023年は144,981人に達しています。内訳は「特定技能外国人」が24,463人(うち30人が2号特定技能外国人)、「技能実習生」が88,830人、「その他(在留資格にもとづくもの)」が31,688人です。「特定技能外国人」と「技能実習生」の約11万人が、減少している「技能者」(職人)を補っていると考えられます。
外国人材を含めても2023年時点の「技能者」(職人)は2009年から▲31万人ですので、既に職人不足は深刻な状況です。しかも、職人数は今後さらに減少することが確実です。
建設業の就業者の高齢化

図4:2020年時点の産業別高齢化進行状況(総務省「2020年国勢調査」より作成)
次に建設業の就業者の高齢化の進行状況について確認しましょう。2020年時点の20産業別の高齢化の進行状況を図4に示します。年齢区分を若年層「15〜34歳」、中年層「35〜49歳」、高年層「50〜64歳」、前期高齢者「65〜74歳」、後期高齢者「75歳以上」として、産業ごとに割合を示しています。
「建設業」は高齢化が進んでおり、50歳以上が約半分の49.3%を占めています。これは全20業種中7番目に高い割合です。ただし、「建設業」は、65歳以上の割合が17.0%と急激に低くなっており、多くの人が64歳までに引退していることがわかります。後期高齢者である75歳以上にいたっては2.9%まで低下しています。

図5:全産業の2000年と2020年の5歳区分就業者数(総務省「2000年、2020年国勢調査」より作成)
次に「2000年国勢調査」と「2020年国勢調査」の5歳年齢区分の就業者数を比較してみましょう。全産業(図5)では、2000年時点には団塊の世代と団塊ジュニアの世代の2つの山を確認できます。2020年には団塊の世代の多くは引退しており、団塊ジュニアの世代の山のみとなっています。
なお、2020年の団塊ジュニア世代の山の高さは2000年とほぼ同じです。団塊ジュニアの世代の後にはベビーブームがないことから、2000年と比較して2020年には40歳以下の就業者が激減していることが確認できます。これによる人手不足を補うために、2020年は60歳以上の就業者が増加しています。

図6:建設業の2000年と2020年の5歳区分就業者数(同上)
建設業(図6)についても同様の傾向を見ることができます。ただし、2000年時点で約71万人であった団塊ジュニアの世代の就業者は、2020年時点では約59万人まで減少しています。20年間の間に約12万人が建設業から離職してしまっているのです。
また、団塊ジュニアの世代以降の就業者の減少速度が全産業よりも早くなっていることも読み取れます。若年者の就業者が増加しないのを補うためか、建設業の60歳以降の就業者の減少は全産業よりも緩やかです。こうした傾向は全産業に対する建設業の就業者比率を確認するとより鮮明に見えてきます。

図7:2000年と2020年の全産業に占める建設業比率の5歳区分(同上)
図7は2000年と2020年の全産業に占める建設業の比率を5歳区分で分析しています。2000年時点においても建設業の就業者比率は年齢区分が若くなるほど低くなる傾向がありました。
ただし、2000年時点で25歳~34歳であった就職氷河期世代では、建設業への就業者比率が高くなっており、建設業が氷河期世代の受け皿のひとつになっていたことがわかります。
2000年時点では、後継者となる若年世代が比較的多かったことから、就業者の建設業比率は60~64歳をピークに減少に転じており、建設業比率の減少速度も速くなっていることがわかります。
対して、2020年時点は、後継者となる若年世代が少ないため、就業者の建設業比率の減少が始まる年代が65歳~69歳にずれています。また建設業比率の減少速度も2000年に比較して緩やかになっています。なお、2020年の建設業比率を20年スライドさせて2000年の建設業比率と比較すると、建設業比率は2000年よりも低くなっていることがわかります。ここから、建設業の離職率の高さが読み取れます。
次回は今後予測される建設業の職人数の推移データをもとに、建設投資への影響を考察していきます。
藤井和之(ふじいかずゆき) 不動産市場アナリスト
1987年 東京電機大学大学院 理工学研究科 修士課程修了、清水建設入社
2005年 Realm Business Solutions(現ARGUSSoftware)
2007年 日本レップ(現GoodmanJapan)
2009年 タス
2022年~現職
不動産流通推進センターの機関誌「不動産フォーラム21」ほか執筆・セミナー活動を実施
著書 大空室時代~生き残るための賃貸住宅マーケット分析 住宅新報出版
不動産証券化協会認定マスター、宅地建物取引士
MRICS(英国王立チャータード・サーベイヤーズ協会)メンバー
日本不動産学会、日本不動産金融工学学会、資産評価政策学会会員