新築住宅価格動向
東京都、特に東京23区の住宅価格についてメディアが頻繁に取り上げているのは新築マンション価格についてです。不動産経済研究所の「首都圏新築分譲マンション市場動向」によると、いわゆるアベノミクスが始まった2013年以降、東京都の新築マンション価格は上昇傾向にあります(図1)。特に、東京23区では2023年を、都下では2024年を境にして、新築マンション価格の上昇率が拡大しています。この上昇率は物価上昇率を大幅に超えています。対して、新築マンションの供給数は2013年をピークに減少傾向にありますので、デベロッパーが物件を絞って、対象とする顧客層を一般層から富裕層に切り替えた可能性が高いと考えられます。2025年の新築マンション平均価格は、東京都、東京23区ともに1億円を超える水準で推移しています。
次に新築戸建ての価格数位を確認しましょう。東京カンテイの「市況レポート: 一戸建て価格推移」によると、東京都の新築戸建ての価格は2021年後半まで4,500万円前後で推移していましたが、その後に上昇基調となり、2025年には6,000万円前後まで上昇しています(図2)。より都心部や駅近に所在すると考えられる小規模新築戸建ての価格は、一貫して上昇基調にありますが、2021年後半頃から上昇幅が拡大し、2025年後半には7,500万前後まで上昇しました。新築戸建て、小規模新築戸建て共に、2021年後半以降の価格上昇は踊り場を挟んで2段階に分かれています。最初の価格上昇は新型コロナウイルス感染拡大に伴う戸建ブームによるもの、2つ目の価格上昇は物価上昇に伴うものと考えられます。
なお、これら新築価格の推移は、平均価格の推移です。したがって、地域や駅距離、住宅・土地の規模等、純粋な住宅価格の推移以外に価格に与える要素を含んでいることには注意が必要です。
中古マンション価格動向
新築マンションの価格推移と同様に、メディアで取り上げられることが多いのが中古マンション価格の推移です。メディアがしばしば引用している東京カンテイの「市況レポート: 70㎡換算価格推移」によると、70㎡換算価格は、東京23区は2025年5月に、東京都は2025年12月に1億円を超えて推移しています。しかしながら、「市況レポート: 70㎡換算価格推移」はマンションの規模こそ調整されていますが、地域や駅距離、築年等、価格推移に影響を及ぼす他の要素については含んだままとなっています。こうした、要素の影響を排して、他の条件が同じ場合の価格の推移を算出したものが国土交通省と日本不動産研究所から発表されています。
国土交通省から発表されているのは「不動産価格指数」で、このうち中古マンションの価格指数は「不動産価格指数(住宅)マンション(区分所有)」で確認することができます。この指数は、国土交通省が実施する「不動産の取引価格情報提供制度」(不動産取引当事者へのアンケート調査に基づく不動産の実際の取引価格等に関する情報を国民に対して提供する制度)により蓄積されたデータを活用し、個別物件の品質をヘドニック法によって調整して推計した指数です。現在公開されているものは2010年=100とした指数で、中古マンションは2007年4月分から公開されています。
「不動研住宅価格指数」は東日本不動産流通機構の中古マンション成約価格情報を用いて、同一物件の価格変化に基づいて算出された指数です。このような推計方法をリピートセールス法と呼びます。米国で著名なケース・シラー指数がリピートセールス法を用いています。現在公開されているものは、2001年1月=100とした指数です。こちらは、1993年6月分から公開されています。
図3に、不動研価格指数を不動産価格指数と同じ2010年=100に換算したものと、不動産価格指数マンション(区分所有)との比較を示します。2007年4月~2011年3月頃までは、両者は同様の動きをしています。その後、不動研価格指数は東日本大震災の影響で低迷しましたが、不動産価格指数は概ね横ばいで推移しています。両者とも、アベノミクスとともに上昇に転じ、コロナ禍収束とともに上昇幅が拡大していることがわかります。両者の差は、分析手法、利用データの両方から生じていると考えられます。前述した通り、リピートセールス法は、同一物件の価格変化に基づいて算出しますが、その際に経年劣化分の補正を行う必要があります。この補正が弱いと、指数が下振れする可能性があります。また、不動研価格指数で用いている東日本不動産流通機構の中古マンション成約価格情報は、主に個人間取引のデータと考えられますが、不動産価格指数が用いている中古マンション情報は、個人間取引以外に、個人―法人取引、法人―個人取引、法人―法人取引も含んでいます。このため不動産価格指数が使用するデータには、買取再販時にリフォームされたことにより、価格が上昇した物件も含まれることになります。これらは、指数が上振れする要因となります。ただし、両者の推移の傾向はほぼ同じであるので、価格に影響を与える要因を考察するにあたっては、どちらを選択しても差し支えありません。本コラムでは、より長期の確認を行うことができる不動研価格指数の2010年=100換算を中古マンション価格推移として採用して検証していきます。
土地価格、中古住宅価格
土地価格と中古住宅価格の推移については、長期かつ個別物件の品質をヘドニック法によって調整して推計した指数である、国土交通省の「不動産価格指数」の「住宅地」と「戸建住宅」の指数(両者とも2010年=100)を用います(図4)。東京都の土地価格、中古住宅価格ともに、リーマンショック前までは緩やかな上昇傾向にあり、リーマンショック後に価格が急落したものの、アベノミクスに伴い上昇傾向に転じ、新型コロナウイルス感染拡大に伴う戸建人気上昇により、価格上昇幅が拡大したことがわかります。
次回は、価格に影響を与えていると考えられる要因の推移についてみていきましょう。

図1 東京都、東京23区、都下の新築マンション平均価格推移
不動産経済研究所「首都圏新築分譲マンション市場動向」より作成

図2 東京都新築戸建て、小規模新築戸建ての価格推移
東京カンテイ「市況レポート: 一戸建て価格推移」より作成

図3 東京都の中古マンションの不動産価格指数(2010年=100)と不動研価格指数(2010年=100に換算)との比較
国土交通省「不動産価格指数」と日本不動産研究所「不動建価格指数」より作成

図4 東京都の住宅地(土地価格)、戸建住宅(中古戸建価格)の推移(2010年=100)
国土交通省「不動産価格指数」より作成
藤井和之(ふじいかずゆき) 不動産市場アナリスト
1987年 東京電機大学大学院 理工学研究科 修士課程修了、清水建設入社
2005年 Realm Business Solutions(現ARGUSSoftware)
2007年 日本レップ(現GoodmanJapan)
2009年 タス
2022年~現職
不動産流通推進センターの機関誌「不動産フォーラム21」ほか執筆・セミナー活動を実施
著書 大空室時代~生き残るための賃貸住宅マーケット分析 住宅新報出版
不動産証券化協会認定マスター、宅地建物取引士
MRICS(英国王立チャータード・サーベイヤーズ協会)メンバー
日本不動産学会、日本不動産金融工学学会、資産評価政策学会会員