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日本の会計新基準にIFRS16号が適用された場合の不動産オーナーの変化とは

IFRSとは国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards:IFRS)のことで、2019年に新しい基準であるIFRS16号の運用が始まりました。
IFRS16号の会計基準は日本の会計基準とは異なるものですので、まだ多くの日本企業や日本の不動産オーナーがIFRS16号に対応した会計処理を行っていません。しかし、今後は日本の会計基準にもIFRS16号の変更点が適用される可能性が高いと言われています。
IFRS16号の変更点が日本の会計基準に適用されるのはいつ頃なのか、また、その際に不動産オーナーの会計処理はどのように変化するのか、詳しく解説していきます。

IFRSが適用になる会社

IFRS16号が日本の会計基準に導入された場合、日本の会計基準の1つである企業会計基準の対象になる会社はIFRS16号の基準に則った会計処理をしなければなりません。
企業会計基準の適用になる会社は会社法上の大会社(資本金5億円以上または負債200億円以上の会社)と上場会社ですので、これらの企業はIFRS16号の適用対象になると認識しておきましょう。

日本基準にIFRS16号が適用されるのはいつ?

日本の会計基準にIFRS16号が適用されるのは2025年頃と言われています。
過去にもIFRSの変更に伴って、日本の会計基準が後追いで対応してきたという事例がありました。
過去にどのタイミングでIFRSが日本基準に適用したのか、また、IFRS16号が日本の基準に対応するのはいつ頃になるのか考察していきます。

過去の適用スケジュール

2014年にIFRSが変更した収益認識基準が日本基準に強制適用になった際には次のようなスケジュールで日本基準に適用されました。

・2014年:IFRSが新基準を公表
・2017年7月:公開草案の公表
・2018年3月:新基準の公表
・2021年4月:新基準の適用

収益認識基準をIFRSに適用した際には、新基準を公表してから3年の準備期間を経て日本基準が適用になりました。
IFRSが新基準を公表してから約7年後に日本の収益認識基準もIFRSの基準に合致したものとなっています。
なお、2023年2月時点で、IFRS16号に対応した日本の会計基準の草案はまだ公開されていません。

2025年には適用される可能性が高い

過去の事例を見ると、2025年から遅くとも2026年には新基準が適用される可能性が高いと言えます。
2022年9月21日の第487回企業会計基準委員会の審議資料には「公開草案の目次レベルで既に8割方の審議が完了」していると記載されています。
そのため、2023年度の初頭には草案が可決されると考えられており、そこから2年から3年後の2025年〜2026年には適用される可能性が高いと言われています。

IFRS16号と日本基準の違い

IFRS16号が日本の会計基準に対応したら、どのような違いが生まれるのでしょうか?
IFRS16号と現在の日本の会計基準の主な違いは次の3点です。

・ファイナンスリース取引とオペレーティングリース取引に区分しない
・ファイナンスリース取引の判断のための数値基準の有無
・割引率の決定方法

リースの区分の問題と、記載方法や判断基準が現行の日本基準とIFRS16号の最も大きな違いだと言えます。
IFRS16号と日本基準の3つの違いについて詳しく解説していきます。

ファイナンスリース取引とオペレーティングリース取引に区分しない

IFRS16号ではリースにおけるオペレーティングリースかファイナンスリースかという区分を廃止します。
これまで、オペレーティングリースとファイナンスリースは次のような異なる会計処理を行ってきました。

・オペレーティングリース:賃貸借処理を行い、借手は、支払リース料を費用として計上し、貸借対照表にはリース資産及びリース債務を計上しない
・ファイナンスリース:「リース料支払い総額の現在価値」で貸借対照表に計上する

IFRS16号で最も大きな違いはこの点で、日本基準ではリースの種類を区別していましたが、IFRS16号ではリースの種類を区分せず、原則的に全てのリースをオンバランス処理します。

ファイナンスリース取引の判断のための数値基準の有無

ファイナンスリース取引かどうかを判断するための数値基準も異なります。

現行の日本基準においては、①リース料総額の現在価値が見積現金購入価額の90%以上②解約不能のリース期間が経済的耐用年数の概ね75%以上などの基準を満たしているリースはファイナンスリースとして分類されていました。
しかし、IFRS16号においてはファイナンスリースかオペレーティングリースかについては、数値基準はなくなり、以下の条件を満たしているリースはファイナンスリースとして認識する「実質的判断」へと変わります。

特定された資産が存在し、以下の条件が揃った場合にリースとして認識するという判断基準です。

・資産についてテナントが経済的便益のほとんど全てを享受している
・テナントが資産の使用に関する決定権を有している

これらの要件を満たしていれば、リース料や解約不能期間に関わらずオンバランス処理しなければなりません。

割引率の決定方法

リース料を決定する際の割引料の決定方法もIFRS16号と日本基準では異なります。

IFRS16号:賃貸借契約期間中に発生する全ての支払いを考慮する
日本基準:賃貸借契約に対しては割引率を決定する際にリース契約に関連する全ての支払いを考慮する必要はない

IFRS16号では全ての支払いを考慮しなければならないため、リース料が高くなる可能性があります。

IFRS16号が日本基準に対応した場合の不動産オーナーにとっての変化

IFRS16号では基本的にはリース資産を使用する側に会計処理の変更を行うものです。
一見すると、リース資産を貸している側の不動産オーナーにとっては変化はないように思えますが、次の4つの点に関してはIFRS16号が日本基準に対応した場合に変化が生じます。

・リースかどうかは実質判断で定義する
・リース要素と非リース要素に分けて会計処理を行う
・サブリースは分類後に会計処理を行う
・セールスアンドリースバックは金融取引として処理する場合がある

IFRS16号が日本基準に対応した場合、不動産オーナーの会計処理に生じる4つの変化について詳しく解説していきます。

リースかどうかは実質判断で定義する

借り手に貸し出した不動産がリースに該当するかどうかは実質判断で定義しましょう。
リースかどうかは以下の基準で判断します。

・資産についてテナントが経済的便益のほとんど全てを享受している
・テナントが資産の使用に関する決定権を有している

ファイナンスリースとして判断した場合には、該当物件の現金での購入価額をリース投資資産(リース債権)として計上する処理を行います。

リース要素と非リース要素に分けて会計処理を行う

IFRS16号ではリース要素と非リース要素に分けて会計処理を行わなければなりません。
リース契約に「建物を使用する権利と管理費、水道光熱費」の両方が含まれているのであれば、「建物を使用する権利」部分のリース料と「水道光熱費」部分のリース料を分けて会計処理を行います。

建物を使用する権利部分は『受取ったリース料ー利益相当額ー水道光熱費』=売上原価として、以下のように会計処理を行います。
借方:売上原価
貸方:リース債権

水道光熱費は以下のように費用処理します。
借方:水道光熱費
貸方:現金

このように、リース料の中に、リース要素と非リース要素の両方が含まれている場合には、分けて会計処理しなければなりません。
具体的には以下のようにリース要素と非リース要素は分かれます。

・リース要素:土地、建物を使用する権利
・非リース要素:維持管理、清掃、光熱費

サブリースは分類後に会計処理を行う

サブリースに関しては、まずはファイナンスリースとオペレーティングリースに分類した後に会計処理を行います。
サブリースとは借手にリースされた原資産を、さらに借手から第三者にリースされた取引のことです。
分類の基準は次の通りです。

・使用権資産の所有に伴うリスクと経済価値のほとんどすべてが移転する場合→ファイナンスリースに分類
・移転しない場合→オペレーティング・リースに分類

当該サブリースが、ファイナンスリースに分類される場合には、ヘッドリース(原資産の賃借である)と、使用権資産の賃借(サブリース)を2つの別々の資産として会計処理を行います。

セールスアンドリースバックは金融取引として処理する場合がある

セールスアンドリースバックの一部は金融取引として処理を行う場合があります。
セール・アンド・リースバックとは、企業が所有する原資産を他の企業に譲渡し、買い手から原資産を借りる取引です。
元の資産の所有者は売却によってまとまった資金を手にした上で、同じ物件の使用を続けることができます。

売却要件を満たす場合には、購入した資産を有形固定資産又は投資不動産として認識するとともに、IFRS16号を適用して貸手としてリースバックの会計処理を行います。

不動産オーナーの会計処理の手順

不動産オーナーはIFRS16号に日本基準が対応した場合、不動産オーナーは次のような手順で会計処理を行います。

①リースの分類を行う
②リースの種類に応じた会計処理を行う

IFRS16号に対応した不動産オーナーの会計処理の流れを詳しく解説していきます。

①リースの分類を行う

まずはリースの分類を行いましょう。
貸手は次の実質的な判断基準で、リースの種類がファイナンスリースなのか、オペレーティングリースなのかを分類します。

・ファイナンスリース:資産の所有に伴うリスクと経済価値のほとんどすべてを移転する
・オペレーティングリース:その他のすべてのリース

IFRS16においては、基本的にほとんどのリースがファイナンスリースに該当します。
まずは実質的な判断基準に照らし合わせて、リースの分類を行うようにしてください。

②-1オペレーティングリースは不動産を資産として計上する

オペレーティングリースに該当するリースにおいて、貸手側は不動産を資産として認識して会計処理を行います。
具体的には「財政状態計算書」と「包括利益計算書」において次のような処理を行います。

【財政状態計算書】
・不動産を表示する
・オペレーティングリースの取得の際に発生したすべての当初直接コストを不動産の帳簿価額に加算する

【包括利益計算書】
・一般的には定額法で、リース期間にわたりリース収益を認識する
・不動産に関連するコスト(減価償却費等)を費用として認識する

オペレーティングリースにおいては、借り手側は資産として認識しないため、貸手側は資産として認識します。


②-2ファイナンスリースは不動産を資産として計上しない

ファイナンスリースの場合はリースしている不動産を資産として貸手側は計上しません。
そのため「財政状態計算書」と「包括利益計算書」に次のような形で会計処理を行います。

【財政状態計算書】
・不動産の認識を中止する
・正味リース投資未回収額に等しい金額でファインナンス・リース債権を資産計上する

【包括利益計算書】
・リース期間にわたり正味リース投資未回収額に対する利息収益として処理する
・無保証残存価値の見積りが減少した場合、減額する
・ファイナンス・リース債権に対する損失評価引当金を認識する

ファイナンスリースにおいては、リースしている不動産を資産として計上せず「リース債権」として認識して資産計上します。
IFRS16号では原資産の借り手側が、「リース資産」として計上するためです。
そして、収支計算においては未回収額に対して、利息収益として処理し、残存価値が減少した場合には「リース債権」という資産の減額処理を行います。

IFRS16号導入に向けて不動産オーナーが準備すべきこと

IFRS16号導入は不動産オーナーの会計処理においてはそれほど大きな変化はありません。

しかし、ファイナンスリースなのか、オペレーティングリースなのかによって会計処理は異なるため、自社の原資産のリースがファイナンスリースとオペレーティングリースのどちらに分類されるのかをあらかじめ分類しておくことは重要です。

また現在受け取っているリース料についても、あらかじめ「どこからどこまでがリース要素なのか」「どこまでが非リース要素なのか」という分類も行っておきましょう。

まとめ

IFRS16号は2025年から2026年には日本の会計基準にも導入されるのではないかと言われています。
不動産の貸手側の処理について大きな変更はありませんが、リースがファイナンスリースに分類されるのか、オペレーションリースに分類されるのかなどについてはあらかじめ把握しておいた方がよいでしょう。
また、リース料の設定についても全ての経費を考慮して割引率を計算しなければなりません。

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※1 ⽉刊プロパティマネジメント誌「業務管理システム調査」より(不動産管理を⽬的とした専⽤ツールにおける国内シェア(⾃社開発システム、excel管理などは含まない)
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