ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)とは?不動産管理における価値向上についても解説
昨今、世界的にも環境問題を改めて取り上げ、政府が主体となり、日々問題解決に取り組んでいます。
そのため、2014年4月に閣議決定されたZEBが再度注目を集めて、さまざまな場面で導入されています。
さらに、ZEBは不動産管理の価値を上げる技術としても、一役買っているので、知識として蓄えておきましょう。
ですが、ZEBは段階が分かれているなど仕組みが複雑です。
そこで、ZENの仕組みや不動産に与える価値をくわしく解説します。
ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)とは
ZEBとは、Zero Energy Building(ゼロ・エネルギー・ビルディング)」の略です。
具体的には、エネルギーの収支がプラスマイナスゼロになる建物のことを指します。
また、似たものとしてZEN(ネット・ゼロ・エナジー・ハウス)がありますが、それぞれ建物によって使い分けられています。
ZEBは環境問題を解決する糸口になるかもしれませんが、達成条件が厳しく、まだまだ普及率が低いのが現状です。
そのため、政府も積極的に普及活動に取り組んでいます。
ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)の段階
ZEBには4つの段階が存在し、各段階で用途や定義が細かく決められているのが特徴的です。
定義を見れば、現段階で所有している建築物がどの段階まで到達しているか判断できます。
達成数値が細かく定められているので、見極めは簡単でしょう。
しかし、正確に把握しておかなければ、改善点がわからずZEBの到達が遠のいてしまいます。
そこで、ここからは4つの段階の細かい数値を示し、くわしく解説します。
ZEB
非常にややこしいのですが、広義のZEBの中に、段階の1つとしてZEBも存在します。
これは、年間のエネルギー消費量がゼロあるいはマイナスとなる建築物のことを指します。
よってこれは、さまざまな技術を駆使した建築物が目指す、最終的な目標です。
くわえて、定義が明確な数値で定められており、目標達成したかどうかが一目瞭然です。
具体的な数値は、再生可能エネルギーを除いた省エネだけで、消費エネルギーの50%を削減。
再生可能エネルギーの創エネを含めると100%の削減に成功しなければなりません。
基準は明確ですが、ZEBを達成するには、エネルギーの消費量を生成量が上回る必要があります。
また、再生可能エネルギーは、充電分も対象です。
Nearly ZEB
Nearlyは翻訳すると「ほとんど」という意味から、Nearly ZEBはZEBに限りなく近い建築物を指します。
年間のエネルギー消費量をゼロに限りなく近づけていますが、相殺はできていない状態です。
具体的な数値として、再生可能エネルギーを除く省エネだけで、消費エネルギーの50%以上を削減。
再生可能エネルギーの創エネを含めると、75%以上の削減が必要です。
ZEBを達成するには、創エネによる削減を15%増加させ、100%にする必要があります。
新しい技術の導入や創エネを生成する少しの工夫を凝らせば、100%の削減を目指せるでしょう。
ZEB Ready
ZEB Readyは、最終的に建物をZEBにするという将来を見据えた建築物を指します。
定義は、ZEBを見据えて、外皮の高断熱化および高効率な省エネルギー設備を備えた建築物とされています。
具体的な数値として、再生可能エネルギーを除く省エネだけで、エネルギーの50%以上の削減に成功する必要があります。
また、上記の2種類と比べて創エネによる削減は1%も達成しておらず、創エネの生成が今後の課題です。
そのため、ZEB Readyはほとんどの建築物が環境に配慮した建物として、最初に目指すべき目標です。
日本でもまずは、ZEB Readyの達成を目標に、さまざまな取り組みが行われています。
ZEB Oriented
ZEB Orientedは、上記の3種類とは異なり、再生可能エネルギーを除く省エネだけに、焦点を当てたZEBを指します。
建物の用途によって目標とする数値が異なり、事務所や学校、工場等はエネルギーの40%以上を削減。
ホテルや病院、百貨店、飲食店、集会所等は、30%以上の削減を基準としています。
ZEB Orientedは、年間のエネルギー消費量を、36%前後も占めている延べ面積10,000㎡以上の建築物のみを対象にしたZEBです。
これは、平成31年3月の経済産業省資源エネルギー庁「ZEBロードマップフォローアップ委員会とりまとめ」によって、改めて検討されました。
これらのエネルギー削減に成功すれば、消費エネルギー全体の消費量も削減できるので、大きな効果が期待されています。
ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)を実現するための2種類の技術
ZEBを実現するには、2種類の技術が必要です。
主に「省エネ」と「創エネ」を可能にする技術が必須とされています。
ここからは、それぞれの技術についてくわしく解説します。
省エネ法
省エネ技術は、消費するエネルギー量を減らす技術のことを指します。
平成29年4月に「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」が全面的に施行されました。
これは、建築物や住宅が消費するエネルギー量が年々増加していることを背景に進められています。
よって、省エネ技術の必要性が、これまで以上に問われ始めました。
さらに、省エネ技術は2種類に分かれており、それぞれ特徴が異なります。
そこで、2種類の技術をくわしく解説します。
パッシブ技術
パッシブ技術とは、室内環境が室外環境に左右されないよう、建物に工夫を加える技術のことです。
主に、外皮と呼ばれる屋根や壁、床に高機能断熱材を使用して、熱の出入りを防ぎます。
これにより、夏は日射熱などの侵入を防ぎ、冬は室内の熱が外に逃げないようにできます。
これは、冷暖房のエネルギー消費量を削減でき、消費効率を上げるのが目的です。
他にも、室内照明の利用回数を減らす「自然採光」もパッシブ技術に当たります。
アクティブ技術
アクティブ技術とは、エネルギーを無駄なく効率的に使う技術のことです。
代表的なものに、エネルギーを多く消費する空調を効率化する技術があります。
エネルギー消費を高機能の設備に変えることで効率化し、全体的なエネルギーの消費量の削減が可能です。
さらに、空調だけでなく、照明エネルギーの消費量を削減するため、高効率照明も存在します。
通常の電灯ではなくLEDや自然彩光によって、照明を賄う技術です。
創エネ技術
創エネ技術とは、太陽光や風などの自然エネルギーを電気エネルギーに変換し、一部の電力として賄う技術です。
代表的なのは、屋根や屋上に太陽光パネルを設置して、日中の消費電力を補います。
これにより、実質消費しているエネルギーの量を減らす狙いがあり、相対的に全国のエネルギー消費量を減らします。
最近では、屋根や屋上だけでなく、窓や壁に太陽光パネルを設置する技術の開発が進められており、今後さらに普及するでしょう。
ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)がいま求められる理由
政府によって、2050年までに温室効果ガスの排出量をゼロにする目標が掲げられました。
長期的な目標だけでなく、2020年と2030年にそれぞれ短期的な目標が示され、現在CO2排出量の削減に努めています。
特に、ビルや商業施設の削減が不可欠となっており、エネルギー消費量を減らせるZEBは、非常に求められる存在です。
日本だけではなく、世界的に喫緊の課題として取り組まれている社会問題です。
カーボンニュートラルにはゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)が欠かせない
前述した通り、世界的にもカーボンニュートラルの重要性が高まっています。
そのため、ZEBを達成することは必要不可欠です。
なぜなら、化石燃料をエネルギーに変換する際に、発生するCO2の割合が多くなっているからです。
ZEBを目指せばエネルギー消費量も削減され、必然的にCO2の量も減ります。
再生可能エネルギーの促進もCO2削減に貢献しているので、ZEBは欠かせない存在でしょう。
ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)で不動産価値が向上
不動産はZEBを目指すことで価値が上昇します。
なぜなら、2017年4月以降、新築の大規模商業ビルには、省エネルギー基準への適合が義務化されたからです。
そのため、エネルギーを生成・削減するZEBの不動産は価値が上がります。
ですが、ZEBはエネルギー基準の適合よりも先に進んでいるため、実現している建築物が少ないのが現状です。
よって、不動産の希少価値も高くなります。
不動産の価値を上げるならZEBを目指しましょう。
エネルギーセキュリティーを高める
エネルギー問題については、一昔前から何度も取り上げられています。
そのため、エネルギー問題は、近い将来多くの人が抱える問題だと予想されます。
ZEBはエネルギー問題に対抗できる手段です。
ZEBを満たした不動産がエネルギー問題について対抗できれば、さまざまな方面から必要とされ、価値の上昇が見込まれるでしょう。
現段階では、ZEBを達成せずとも目指すことが重要です。
企業価値や生産性の向上に繋がり価値を高める
現段階でZEBを実現している建築物は数が少なく、第一段階であるZEB Readyを目指すには、費用がかかるとされています。
ですが、国は補助事業を展開するほど、ZEBに対する前向きな姿勢を見せています。
ZEBに向けて取り組むと費用がかかってしまい、企業に得がないように思えますが、実はブランドイメージが向上し、生産性が上がるなどメリットが豊富です。
今後は大型ビルだけでなく、中小規模のビルにも省エネが必要になり、ZEBの導入が必須となるでしょう。
まとめ
世界的にもエネルギー問題が取り上げられ、消費量の多い建築物の省エネが必須となっています。
そこで、省エネと創エネによって、エネルギーを削減するZEBが重要視されています。
ZEBは4段階に分けられていますが、まだまだ1段階目も少ないのが現状です。
ですが、ZEBを達成した不動産は、社会的背景から価値が上昇するでしょう。
また、企業のブランド力も向上し、生産性も上がります。
よって、これからの不動産はZEBを目指すのが必須となってくるでしょう。