東京圏・関西圏における物流倉庫の需要と供給
図1に東京圏と関西圏の物流倉庫の賃貸可能面積の推移を示します。2019年の労働基準法改正後に、物流倉庫の賃貸可能面積は、東京圏では約1.9倍、関西圏では約1.7倍に増加(2024年10月時点)しています。

図1:東京圏と関西圏の物流倉庫の賃貸可能面積推移(一五不動産情報サービス「物流施設の賃貸マーケットに関する調査」より作成)
続いて、下記の図2に東京圏と関西圏の物流倉庫の新規需要面積の推移を、図3に新規供給面積の推移を示します。
東京圏においては2019年の「労働基準法」改正後に新規需要が増加しています。新型コロナウイルス感染拡大の影響で2020年前半に需要が減少しましたが、2020年後半以降に需要は再び増加し、自動車運転者への労働時間規制が開始される半年前まで高い水準で継続しました。
需要の増加を受けて、2021年後半から東京圏では新規供給面積が大きく増加しています。一方で関西圏においても、若干の需要の増加が見られますが、増加幅は東京圏に比較して小さなものになっています。これは人口や企業の集積度の違いによるものと考えられます。
関西圏においては新規供給面積の変化がほとんど観察できませんが、これには需要の変化が小さかったこと以外にも理由があります。

図2:東京圏と関西圏の物流倉庫の新規需要面積推移(同上)

図3:東京圏と関西圏の物流倉庫の新規供給面積推移(同上)
以下の図4に東京圏と関西圏の物流倉庫の空室率の推移を示します。労働基準法の改正前、関西圏の物流倉庫の空室率は東京圏よりもかなり高い水準にありました。つまり倉庫に余裕があったため、新規供給が抑えられたという側面があるのです。
物流倉庫の空室率は、東京圏、関西圏ともに労働基準法改正後に大きく減少していますが、東京圏では新規供給増加とともに空室率が上昇傾向にあります。需要の急増に応じて行われた新規供給が過剰気味であったことを示しています。

図4:東京圏と関西圏の物流倉庫の空室率推移(同上)
テクノロジーの進化と倉庫需要
前回解説したとおり、ドライバー不足への当面の対応策として大都市周辺及び中継拠点における倉庫需要が増加し、実際に多くの大型倉庫が供給されています。
さらに、行き過ぎたグローバル化への反動や米中対立の長期化もあり、中国から国内に生産拠点を戻す動きも出てきています。TSMCやRapidusをはじめとした半導体産業の工場も相次いで建設されています。これらのサプライチェーンの見直しも進んでいることから、当面は物流拠点としての大型倉庫需要の増加は続くと筆者は考えています。
一方、道路貨物運送業就業者の高齢化とそれにともなう人員の減少は継続しますので、現在と同様の物流が立ち行かなくなる時が差し迫っています。このため、物流業界ではIoT(Internet of Things)やAI(Artificial Intelligence)を活用した自動化や効率化の取り組み(ロジスティクス4.0)が行われており、近未来の倉庫需要にも影響を及ぼす可能性があります。たとえば、高速道路における自動運転が比較的近い将来に実現すると考えられます。
これにより、トラック運転者を長時間拘束する長距離輸送が自動運転に置き換えられることになるでしょう。当初はトラック運転者が同乗し、高速道路を降りた所から運転を引き継ぐ形となると考えられます。
しかし、これは労働時間の短縮にはなりますが、拘束時間の短縮にはなりません。このため、いずれは自動運転だけで最寄りの高速道路出口まで貨物を運び、地元のトラック運転者が貨物を引き継ぐ形に代わる可能性があります。いずれにしても、高速道路の自動運転が実現した時点で、これまでの対応で設けられた中継拠点の必要性が低くなります。
代わりに、地元のトラック運転者と自動運転トラック間で貨物を引き継ぐためのスペースや倉庫が高速道路の出入口近くに設けられることになるでしょう。ただし、大都市周辺では既に用地が不足しているので、大都市から50km~100kmほど離れた地域に新たな倉庫需要が生まれる可能性があります。
また、ドローンなどの自動運転車による配送とIoTによる個々の荷物の識別・追跡と自動化倉庫が重要な役割を持つようになります。トラックへの荷物の荷揚げ・荷下ろしを行うことに最適化された倉庫は、自動運転車との荷物の受け渡しに最適化した形に更新されていくことになります。
こうしたさまざまな自動化が実現していくにあたって、物流業界自体も大きく変化していくことになるでしょう。倉庫需要の変化にともなって不動産業界も影響を受けることになります。技術の進歩は予想外の速度で進んでいますので、常に想像力を働かせ、備えていくことが重要であると筆者は考えています。
藤井和之(ふじいかずゆき) 不動産市場アナリスト
1987年 東京電機大学大学院 理工学研究科 修士課程修了、清水建設入社
2005年 Realm Business Solutions(現ARGUSSoftware)
2007年 日本レップ(現GoodmanJapan)
2009年 タス
2022年~現職
不動産流通推進センターの機関誌「不動産フォーラム21」ほか執筆・セミナー活動を実施
著書 大空室時代~生き残るための賃貸住宅マーケット分析 住宅新報出版
不動産証券化協会認定マスター、宅地建物取引士
MRICS(英国王立チャータード・サーベイヤーズ協会)メンバー
日本不動産学会、日本不動産金融工学学会、資産評価政策学会会員